布袋尊をお祀りしている不動院(橋場不動尊)は、天平宝字4(760)年、奈良東大寺建立に尽力のあった高僧良弁僧正の第一の高弟寂昇(じゃくしょう)上人によって開創されました。当初は法相(ほっそう)宗でしたが、長寛元(1163)年に時の住職教円(一説には長円)によって天台宗に宗派を改め、鎌倉以降は浅草寺の末寺となりましたが、現在は比叡山延暦寺の末寺となっています。
江戸時代には、周辺の三条公、有馬候、池田備前候などをはじめとする武家の尊信をも集め、明治末年の大化、関東大震災、そして昭和20年3月の東京大空襲の際にも、不動院を中心とした橋場の一角だけは災禍をまぬがれたことから、霊験あらたかな橋場不動尊として現在でも広く庶民に尊信されています。
現在の本堂は、弘化2(1845)年建立のもので、小堂ながら江戸時代の建築様式を保ち、美しく簡素なたたずまいをしめしています。
ご本尊の不動明王は、良弁僧正が相州大山寺で修法(しゅほう・国家または個人のために加持祈祷をする法式)しながら刻んだ一木三体不動のうちの一体で、開運厄除け不動の秘仏となっていて拝観することはできませんが、お前立のご本尊として不動明王(鎌倉時代の作)は、あたりを圧する偉容で世の中の災厄を払っており、江戸市民から久しく尊信されてきました。
|
不動明王像 |
不動院のご尊像は江戸時代のころから伝わるもので、肩に袋がなく、お腹が袋代わりの形をしている珍しいものです。大きな度量、清く正しい行為の福を授けてくれる布袋様そのものといったお姿で、古くから江戸庶民に尊信されています。 |